緒方林太郎

【緒方林太郎】「軍属」の定義

沖縄での殺人、死体遺棄事案については、これは絶対に許せません。「綱紀粛正」、「再発防止」という言葉が空しく聞こえるくらいです。

そういう中、24日、衆議院安全保障委員会が開かれました。私は同委員会のメンバーではありませんが、玉木筆頭理事からお話を頂き、30分質疑に立ちました(映像はココの緒方林太郎の部分)。

このエントリーでは、質疑の後半(15:20くらいから)についてご説明したいと思います。「軍属」についてです。今回の容疑者は、米軍側から「軍属である」との連絡があり、日本もその前提で捜査、事情聴取としております。

「軍属」には地位協定の保護が掛かります。今回は基地外で逮捕されたことから、「軍属」に対する裁判権の問題は生じておりませんが、仮に基地内に逃げ込んでいたら、やはり引渡し、拘留、裁判権の是非について問題が生じたでしょうから、将来的な事を考えれば、この「軍属」の定義がどうなっているかはとても重要です。

NATO地位協定の対比をする必要があるため英語で引用しますが、日米地位協定における「軍属」の定義は以下のようになっています。

【日米地位協定】
b. “civilian component” means the civilian persons of United States nationality who are in the employ of, serving with, or accompanying the United States armed forces in Japan, but excludes persons who are ordinarily resident in Japan or who are mentioned in paragraph 1 of Article XIV. For the purposes of this Agreement only, dual nationals, Japanese and United States, who are brought to Japan by the United States shall be considered as United States nationals.

米軍との間で「雇用(employ)」、「勤務(serving with)」、「随伴(accompanying)」の関係にある人間が「軍属」に当たります。この中には、米軍の直接の指揮下にない方が含まれています。特に「勤務」、「随伴」の部分はかなり広い概念です。なお、「勤務」の英文である「serving with」は、日本語の語感よりも広いという事もあります。

質疑では、今回の容疑者はこの3類型のどれかという質問については、現時点では「分からない」ということでした。軍属であることが明らかなのに、どういう事情で軍属なのかについて答弁出来ないというのは疑問が残ります。つまりは米軍が軍属だと言っている、ということだけが拠り所という事です。

いずれにせよ、この軍属の定義は広過ぎると思います。よく考えれば、今回の容疑者は米軍に直接雇用されておらず、直接の指揮下にないわけですから、「綱紀粛正」、「再発防止」と言っても、限界があるはずです。

実際、NATO地位協定における軍属の定義は「雇用」のみが含まれます。今回の容疑者は米軍請負企業による雇用ですから、恐らくこのNATO地位協定では軍属に当たらないと思われます。

【NATOの地位協定】
b. “civilian component” means the civilian personnel accompanying a force of a Contracting Party who are in the employ of an armed service of that Contracting Party, and who are not stateless persons, nor nationals of any State which is not a Party to the North Atlantic Treaty, nor nationals of, nor ordinarily resident in, the State in which the force is located.

日米地位協定では明確に定義が広いわけでして、NATO並みを追うのであれば協定の見直しが必要となるでしょう。ただ、政府は「運用で対応する」という答弁でした。仮に運用で対応したいという事であれば、米軍が自主的措置として「雇用」、「勤務」、「随伴」の一部、つまりは米軍の指揮下にない人を軍属の対象から外し、地位協定の保護を与えないとするという方向になるでしょう。

そういう方向に向けた意気込みだけでも聞きたいと思いましたが、ここも答弁がありませんでした。米国防総省ですら「今回の容疑者は軍属に含まれるべきではなかった」、「軍属の範囲を見直したい」といった趣旨の話をしているわけですから、日本としての意思を示す観点から軍属の概念を狭める方向で問題提起したいくらいの答弁は欲しかったです。

折角、安全保障委員会で質疑の時間があったのに、地位協定の解釈について答弁は殆どありませんでした。そこまで米軍の意向を忖度する必要があるのかな、事ここに至れば、少なくとも運用改善の方向性に向けた意気込み・方向性くらいは示すべきだったのではないかなと首を傾げてしまいました。


出典:http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-12164380932.html


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