梶原康弘

【梶原康弘】安倍総理の罪

 平成14年、消費税引上げ延期の際、「再び延期することは絶対にない。はっきり断言する」と明言したにも関わらず、見事に豹変した。サミットでの世界経済リスクを強調した発言や消費税の再延期で世界中に日本に対する経済的、政治的不信を増幅させた。消費税の再延期について世界経済に責任を転嫁し、未だにアベノミクスが成功したと強弁している。財源不足が明らかなのに選挙対策のために骨太の方針と称して社会保障の充実や空虚な目標だけをあげつらっている。

 この3年半年、たしかに大企業や富裕層は良くなったと思う。しかし、実質賃金や家計消費は減少し、非正規雇用は増え、格差は拡大している。異次元の金融緩和や公共事業の倍増にも拘らず、GDPはほとんどゼロ成長だ。庶民の暮らし向きが悪化し、購買力が奪われ、実態経済が減退していることは明らかだ。私も今、消費税を引き上げられる環境にはないと考える。だからこそアベノミクスの失敗を認識し、政策を転換しなければ、経済の浮揚もデフレ解消も期待できない。

 また、社会保障の充実が不可欠の状況だが、3党合意で決めた「社会保障と税の一体改革」を二度までも反故にして、日本の未来を見据えて与野党を超えて合意された大義は完全にぶち壊された。もちろん1000兆円を突破して増え続ける財政赤字を抱えながら、消費増税もできないとなれば、ジャパンリスクに対する国際社会からの厳しい目が向けられることは必然だ。

 自民党も少しの抵抗を見せたが、パフォーマンスでしかなかった。小選挙区制度や政党助成金のお陰で政治権力が集中し、与党全体がイエスマンになっている。財務省も保身のためか、抵抗できなかった。マスコミも高市総務大臣の報道規制発言を恐れてか、経団連の圧力があるのか、声高に政府を批判することはない。一強多弱の国会の下で安倍総理の暴走を止める者はいない。

 安倍総理はさらにアベノミクスを加速するという。岩盤規制改革と称して残業代ゼロ法案をやるだろうし、競争力強化としてさらなる法人税の軽減を行うだろう。財政出動も拡大するだろうが、これまで以上に役人の財布と言われる基金や未執行の公共事業が増えるだけではないか。地域経済や国民の生活にはおよそ貢献するものではない。

 一つ例を挙げると、一年に2兆円もの純利益をあげている日本のトップ企業A社は、5年間にわたって法人税を払っていない。もちろん企業による不正でなく、大企業優遇の仕組みがあるからだ。A社ばかりでなく、大企業であるほど、法人税を支払っていない。同時にA社は毎年5千万円の政治献金を自民党に拠出している。経団連が会員企業に対して自民党への政治献金を促し、自らに有利な政策を実現させ、内部留保を年々増やしていくというからくりが出来上がっている。

 なぜ、内閣支持率がこれほどまでに高いのが、理由がわからない。世論調査によると、今夏の参議院選挙も与党の圧勝になるという。安倍総理は自らの公約を見事に豹変させ、それを他者のせいにする。TPPも、安保も、消費税もそうだった。しかし、それらがどういう結果をもたらしたとしても、責任は負わない。なぜなら、現実を見ようとしないからだ。安倍総理の関心は選挙後、経済から憲法に移るだろう。前回選挙でも「アベノミクス、この道しかない」と言いながら、やったのは安保法制だった。

 自民党の憲法改正草案によると、緊急時に政府の権限を強める緊急事態条項の創設や専守防衛の撤廃に加え、立憲主義、基本的人権の尊重を弱め、国家権力を強める内容となっている。私たちが愛してきた日本の国や社会が、この先全然違う方向に向かっていくのではないか。権力や富を握るほんのわずかな人とそれ以外の大衆という分断された国になるのではないか。いつか来た道、日本が本当にそんな道を歩こうとしていることを自覚しなければならない。


出典:http://ameblo.jp/yasuhiro-kajiwara/entry-12167253643.html


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