初鹿明博

【初鹿明博】Banbi通信 VOL.299

障がい者施設で19名が刺殺、26名が負傷
戦後最悪の事件から障害者施策を考える

 7月26日未明に相模原市の障がい者の入所施設「津久井やまゆり園」で19人が刺殺され、26人が負傷するという単独犯では戦後の殺人事件で最も犠牲者の多い凶悪な事件が発生しました。
 しかも、障がい者を社会から排除することが目的であり、差別や人権という観点からも許し難い事件です。
 障がいがあろうが無かろうが全ての命はかけがえのない大切なものであることは言うまでもありません。深夜寝ている無抵抗な状態の時を狙って、一瞬にして次々を殺傷していったことにこれまで感じたことのない憤りを覚えます。
 政治家として都議会議員の時から障がい者福祉や差別禁止に力を注ぎ、自らも障がい者の施設を運営している私としては、差別と偏見を背景にこのような重大な事件が発生してしまったことに対して、本当に遣り切れない思いで一杯です。
 事件の概要等については既に新聞やテレビで繰り返し報じられているので、事件の内容について詳しく触れることはせずに、今後、どのようなことが必要となってくるのか、その際に考えなければならないことは何か、そして、現状何が問題なのか等について掘り下げていきたいと思います。
 この事件の容疑者である26歳の施設の元職員が過去に措置入院しており、直ぐに退院していたことを受けて、措置入院の制度や運用について見直しを検討することを厚生労働省が早々に発表しました。
 措置入院というのは、入院させなければ自らを傷つけたり、他人に危害を加えたりするおそれがある場合に、都道府県知事の権限と責任において、本人や家族の意向に関わらず、強制的に入院させるという精神保健福祉法第29条の規定に基づくものであります。
 つまり、本人の意に反して入院させ、知事が認めなければ永遠に病院から出ることが出来ないという人権を大幅に制限する強権的な制度になっているのです。
 それ故に、措置入院とするには慎重な判断が必要となってくるのです。
 今回の事件を契機にして、何かあってからでは遅いと必要以上に警戒して、措置入院までしなくても良い人まで入院させられたり、もう退院出来る状況なのに退院させないようになったりしないか不安が残ります。
 措置入院に限ったことではありませんが、精神病院を退院する時に何にもなく退院させるのではなく、相談支援などの福祉サービスの事業所や訪問看護ステーションのような地域医療の事業所にきちんと繋いでいくことが必要だと思います。
 退院した精神障がい者が地域の中で孤立することなく、常に誰かのサポートを受け、関わりを持ち続けることが重要なのだと思います。
 この事件を契機に、精神障がい者はいつ犯罪を犯すかわからないから病院から出すなというような、精神障がいのある方々に対する偏見が広がり、差別が起こるような事態だけは防がなくてはならないと感じます。
 措置入院の見直しが犯罪とは無縁の大多数の精神障がい者の人権を無視して、行政が自由を奪う事にはならないと信じていますが、今の安倍政権の中枢にいる方々の志向を考えると障がい者の人権なんか制限してもよいのだという考えに至るのではないかと非常に心配しています。
 もうひとつ、皆さんに考えていただきたいことは、障がいのある方々が、これまでどこでどのように暮らしてきていたのかということに多くの国民が無関心過ぎたということです。この無関心と障がい者に対する無理解がこのような事件が発生するきっかけになったと感じています。
 今でこそ重度の障がい者でもグループホームなどで地域の中で暮らすことが出来るようになりましたが、障害者自立支援法が出来る前、それこそ、措置の時代は人里離れた山の上なのに作られた巨大に入所施設に好むと好まざると送られてしまっていました。
 特に東京は地価が高い、住宅が密集していて建設に際し近隣の理解が得にくい等の理由から、東京都内ではなく北海道や東北等に「都外施設」という東京都の障がい者が入所する他道県の施設が多く作られ、多くの障がい者が、住み慣れた東京を離れて、送り出されているのです。
 このような巨大な施設で朝から晩まで自由に出かけることも出来ずに生活をし続けなければならない状態から、障がい者を地域で支える制度が整ってきてグループホームやアパートでの自立生活が出来るように障害者自立支援法が施行されて以降はなってきましたが、まだまだ、十分ではありません。
 今回の事件も入所者数の多い入所施設であったから1時間にも満たない短時間で19名の命を奪い、26名が負傷するという事態に陥りましたが、容疑者が勤務していた施設が入所定員が5~6名のグループホームであったら、このような集団殺人を考えなかったのかもしれません。
 また、近隣の住民もそこに施設があることを知らなかったというように、地域とは閉ざされた施設でありましたが、これが地域の中に溶け込んだグループホームであったら、近所の目を気にして、犯罪の標的にはされなかったのかもしれません。
 いずれにしても、ひとつのところに多くの障がい者を集めて住まわせるような大きな施設からひとりひとりの障がい者の生活をオーダーメイドで支えることが出来るような福祉サービスへの転換を進めていく必要があり、今回の事件で改めて施設から地域への流れを進めていかないとならないと感じています。
 このように障がい者は何も出来ない人達と決めつけて、入所施設に追いやって来た事実に無関心もしくは無知な国民があまりにも多いことが、このような事件を発生させる背景にあったのではないでしょうか。
 また、容疑者がどうしてこのような排他的な考えを持つように至ったのかも検証が必要だと感じます。教育に問題があったのか現在の福祉サービスに問題があったのか、将又、単に個人の問題に過ぎないのか。
 この事件を反面教師にして、異質なものを排除するような排他的な発想を全ての国民が捨てて、障がい者もそうでない人も全ての人が尊重され、地域の中で共に暮らしていくことの出来る共生社会を創って参りましょう。

東京都知事選
鳥越俊太郎候補は届かず

 昨日、投開票で行われた東京都知事選挙は、自民、公明が推薦する増田寛也元岩手県知事、自民党に推薦願いを出すも袖にされ無所属で出馬した小池百合子元環境大臣、そして、民進党はじめ野党4党と市民団体が推薦する元ジャーナリストの鳥越俊太郎氏の三つ巴の闘いとなりました。
 野党4党が結集して鳥越候補の必勝に向けて17日間闘いましたが、一歩及ばず当選には至りませんでした。
 当選した小池候補は非核都市宣言をすると主張した鳥越候補と対極の核武装論者で、発達障害は親の責任とする親学の推進者であるので、今後の都政、特に教育行政が間違った方向に行ってしまうのではないかと非常に心配です。選挙の結果は真摯に受け止め、安定した都政運営を行っていただけることを祈念します。


出典:http://ameblo.jp/hatsushika-akihiro/entry-12186226598.html


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