海江田万里

【海江田万里】【高校生にわかる政治経済】(第9回)戦争と平和(その1)

8月は6日が広島の平和祈念祭、9日が長崎の原爆の日、そして15日が終戦記念日と、私たちは戦争と平和について考える月です。戦争を憎み、平和を希求するのは日本国民ならずとも世界の人々に共通の思いです。しかし、現実に戦争はなくなりません。どうすれば世界から戦争をなくすことができるのか?その点について一緒に考えてみたいと思います。

戦争について19世紀プロイセンの将軍カール・フォン・クラウゼビッツは、その著書『戦争論』の中で、戦争に必要なのは①国民の憎悪の感情②軍隊の能力・技能③政府の理性的な判断の3つの要素だと説いています。これを「戦争の三位一体」といいます。

先ず、戦争を始め、継続するには、戦争の相手に対する国民の憎悪が必要です。1960年代のベトナム戦争において、アメリカでは、国民の間にベトナムの共産主義者に対する憎悪より、厭戦気分の方が大きくなったことにより戦争が終結に向かいました。

軍隊の能力を考えると、近代戦では高度な武器を使いこなす専門的な技術者集団の軍隊が必要です。ナチスは敗戦が色濃くなってから、少年兵や高齢者を戦場に駆り出しましたが、これでは戦争になりません。

その上で、政府に求められるのは理性的な判断、つまり合理的な戦略を定めることです。先の戦争で日本の政府は、終始こうした冷徹な判断力を欠いていました。

この考え方に立てば、戦争を避けるためには、先ず、国民の間に排外的な愛国心や他国、他国民に対する憎悪の感情を育てないことが重要です。そして軍隊に対しては、他国に侵略されないような規模に限定して、強大にならないようにつとめなければなりません。最後の政府の冷静な判断は、国民の感情を燃え上がらせるようなことであってはならず、むしろ国民感情を冷ますような対応が必要ですし、外交的な手段によって戦争を回避する努力を怠らないことが重要です。「戦争は政治の延長である」との言葉もクラウゼビッツが『戦争論』の中で説いています。

現在の日本が戦争に向かっているのか、平和を維持することが可能かどうかは、先ず、この3つの要素を点検してみることが必要でしょう。

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出典:http://kaiedabanri.jp/topics/201608029210.html


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