松本大輔

【松本大輔】己の欲せざるところは

「今日まで5.3兆円の損失を隠してきたことに強く抗議したい。さらに国民の年金は損失しているのに、国家公務員共済はプラスと言うのはおかしい。この結果は株安のせいではなく、アベノミクスと称して株式運用比率を倍増して国債比率を下げたからだ。その証拠に国家公務員(共済)がプラスになった。ここは非常に重要だ。」(7月29日 山井和則衆議院議員 民進党のヒアリングで)

 

己の欲せざるところは人に施すなかれ。

 

家では3歳の娘を叱ったり注意したりするときに、これの口語体を使ったりしますが、大人も同じ、年金運用についても同じだと思います。

 

政策遂行のど真ん中にいるスタッフたちも内心自分たちにはしてほしくないなあと思っていることは、当然ながら国民に対してもするべきではありません。

 

厚労省をはじめとした政府の心あるスタッフも当然そう感じていたと思います。

 

だからこそ、そういう決定を行ってしまった現政権の政治に、改めて憤りを覚えます。

 

詳細は民進党のサイト( www.minshin.or.jp/article/109743 )に譲りたいと思いますが、

 

1.昨年10月に厚生年金と共済年金が統合され、両者の年金積立金の国内債券での運用比率を示す基本ポートフォリオはともに35%まで引き下げられた。(年金を株価のテコ入れに使うため)

 

2.一方、「基本」ポートフォリオであるため、誤差も許容されている。これを乖離許容率という。

 

3.実は、この乖離許容率については両者に差がある。国民年金・厚生年金はプラスマイナス10%の範囲であるのに対し、国家公務員共済ではプラスマイナス30%の範囲まで乖離が許容されている。

 

4.3月末時点の実際の国内債券での運用比率は国民年金・厚生年金が37~39%と基本ポートフォリオに近い構成比になっているのに対し、国家公務員共済は基本ポートフォリオとは大きく異なる62%と、実際には国債での安全堅実運用を継続。

 

5.昨年度の運用資産ごとの成績は国内株、外国株、外国債がいずれもマイナスであるのに対し、国内債は唯一プラス。

 

6.結果、国内債券で6割強を運用した国共済のほうがより堅実な運用結果となり、損失計上を免れた。一方、国内債券での運用比率を4割弱まで急減させた国民年金・厚生年金は5.3兆円もの損失を計上する結果となった。

 

7.こうした1年間の年金運用成績はこれまで例年7月初旬までには発表されてきたが、今年は参院選の投票後となる7月29日に先送りされた。

 

年金財政の為に、給付に必要な金額を将来確保できないリスクに備えて、ハイリスク運用に舵を切る必要がある(=年金でもっともっと株を買う必要がある)との説明がいかに空々しいものであるか、国民に対し誠意を欠いた、欺瞞に満ちたものであるか、1~7の事実が何より雄弁に物語っているように思えてならないのは私だけでしょうか。

 

先日の金融政策決定会合でも2人の審議委員から、市場の価格形成をゆがめるとしてETFの買い増しに反対論が出ていましたが、リオデジャネイロオリンピックも始まることですし、そろそろ年金と日銀による買い支えが前提となった今の株式市場についても、アンチドーピングの立場から毅然と警鐘を鳴らしていくべきだとも考えます。

 

年金運用変更については、市場への影響、運用成績への影響等に鑑みて、事ここにいたってはすぐには運用資産の売却、入れ替えを実現することが困難であり、ある程度の時間をかけながらポートフォリオの組み替えを行っていかざるを得ないという点でも、この政策は本当に罪深いと思います。

 

おそらく8月12日には、今年度の第1四半期(4~6月)の運用成績も開示されます。

ちまたの予想では、5兆円前後のマイナスとなりそうだとも言われており、そうなると、2014年10月末に年金運用変更が強行されて以来の通算成績でもマイナスとなる見込みです。

 

現在厚生年金の保険料率は毎年引き上げが続いていますが、来年度に18.3%に到達した後は据え置きというのが、2004年の年金改正の内容でした。

 

今回のように株価のテコ入れに「国民の」年金(だけ)を使うという身勝手な運用変更で損失計上が続き、保険料率はそのために再引き上げが必要だといったことになっては目も当てられません。

 

その意味でも年金は9月の臨時国会でも大きな争点だと考えています。

 

政治に緊張感を取り戻す。それに資する代表選にしていきたいと思います。


出典:http://www.dakara-daisuke.com/entry/2016/08/05/112006


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