緒方林太郎

【緒方林太郎】TPP(アメリカからの圧力)

 TPPについては、アメリカ大統領選挙で両候補とも反対を明確にしている事から、その帰趨が注目されます。

 普通に考えれば、アメリカは新政権になれば再交渉を要求してくる可能性があります。ただ、日本はこれまで「再交渉はしない」と累次に亘って表明してきています。ただ、それは現在のオバマ大統領、フロマン通商代表がそれにコミットしているだけであり、新政権になった時、それを貫けるかは微妙な所があります。

 仮に再交渉にならない時、懸念されるのは「国内法レベルでの追加的な措置を求めてくる」ということです。協定再交渉はしないけども、協定で(アメリカが)期待している市場アクセスを確保する観点から、その障害になるようなものに国内法レベルでケチを付けてくるということです。

 既に私の所には(私だけではなく多くの議員に来ている模様)、アメリカのロビイストが「価格下落の際に補填をする豚マルキンの制度拡充については、生産拡大局面でも発動されることから問題が多い。」という指摘をしてきています。私からは「あのね、今、日本の豚肉生産農家はし尿処理等でコストも掛かるし、高齢化しており、価格下落でも補填があるから生産を拡大するなんてことは無いのよ。単なる言い掛かり。」と言っておきましたが、アメリカでは結構な数の上院、下院議員が署名した、豚マルキンに懸念を表明するレターがフロマン通商代表に出されているようです。

(なお、当該ロビイストは、そのレターの写しをこれみよがしに見せてきたので、私から「だから、どうした?こんなものが私への圧力になると思っているのか?」と言って突き返しておきました。相手は憮然としていましたが。)

 こういうかたちで国内法レベルでの容喙が来る可能性はあると思い、私は通常国会の内閣委員会で石原大臣に太い釘を刺しておきました。3月9日(15分35秒くらいから)、3月11日、質問主意書(質問答弁)、3月25日の質疑がそれに当たります。

 3月9日の質疑では、「国会提出されたTPP国内実施法は、TPPという条約を国内で実施するために必要かつ十分か。」というアプローチからスタートしています。「必要」だけでは将来的に追加的な立法措置をする可能性が排除されないので、「必要十分」だと言ってもらう必要があったのですが、石原大臣は「必要」、「十分」の概念整理がどうも苦手らしく、堂々巡りの議論になっています。

 それを踏まえて、3月11日の質疑では「日本の国内手続きが終わった後に、アメリカの圧力を受けて、追加的に国内法改正を行うことはないか。」という点を聞いています。今、見直してみると、石原大臣が手にしていた答弁書は「そういう圧力が来ることは想定していない」というものだったように思います。しかし、アメリカでは通商法の中に「相手国の国内制度が十分に整備されているかどうかを判断した上で、アメリカはその国との通商協定を批准する。」という趣旨の「承認(certification)」という制度がありまして、それを通じて、アメリカは「日本は国内法整備が不十分だから、アメリカはTPPの批准をしない。」と圧力を掛けてくる可能性があるわけです。なので、「想定していない」という答弁そのものが不適当なのです。

 ただ、3月11日の質疑を見ていただければ分かりますが、石原大臣はその辺りの機微がご理解いただけなかったのか、究極の堂々巡りです。仕方ないので、その直後に質問主意書を提出しています。そこでようやく「追加的な国内法措置は不要」という答弁を取り付けています。それを3月25日の質疑の冒頭で確認しています。

 更に3月25日の質疑では、(法律ではない)サイドレター、口上書の交換、政令、省令、予算措置等を通じて、何らかの追加的措置を行うことはないか、という事を念押ししています。これもやらないと言っています。

(なお、ここでは深く書きませんが、3月25日の質疑の6分50秒以降では、TPPにおける著作権の問題、農業予算の問題についても質疑しています。これはこれで面白いやり取りになっています。文化庁、農水省いずれも少し苦しい答弁です。)

 テクニカルな内容ですので(日本農業新聞以外では)なかなか注目はされませんが、日本としてアメリカの圧力に屈しないよう、色々と歯止めを国会答弁の中で確保しようとしている事はご理解いただけるかと思います。


出典:http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-12191400270.html


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