緒方林太郎

【緒方林太郎】緊要性

 毎年、大体この時期になってくると補正予算が編成されることが多いです。今年も第二次補正予算が国会に提出されてきます。

 そもそも、補正予算というのは何かと言うと、財政法第29条に書いてあります。

【財政法】

第二十九条   内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。
一  法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出(当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを含む。)又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合

(略)

 つまり、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出等」を行うためです。ここで重要なのは「緊要性」です。しかし、最近はどう見ても「緊要」とは思えない予算が補正で入ってきている事が多いです。経常経費、又はそれに近いものが補正予算に入って来ています。

 これが何が悪いかと言うと、当初予算の編成、そして予算執行に緩みが出てしまうのです。「当初予算で取れなくても、補正でやればいい。」、「補正で付くから大丈夫。」といった思いが蔓延してしまう事は財政規律の観点からとても問題だと思います。

 ということで、今年度第二次補正に際して、各省庁に「事業毎に緊要性の根拠を出してほしい。」と依頼しました。返ってきたのはこの資料です(是非、見てください。)。かなりのボリュームがありますが、読むのはすぐに終わります。何故なら同じ事しか書いていないからです。

 財務省に聞いてみたところ、(ちょっと正確ではないかもしれませんが)「政府として、今、やる事が必要だと思えば緊要性があると判断したことになる。」というお答えでした。これですと、「緊要性」という財政法第29条の規定はほぼ死文化してしまって、財政規律に対する何の歯止めにもなっていないということになります。

 実際、政府答弁もそんな感じです。

【平成25年2月18日 参議院予算委員会】

○国務大臣(麻生太郎君) 特に緊要になった経費の支出というのは(略)、翌年度の予算編成に計上して執行するのでは間に合わないというような意味でして、緊急性があると政府が判断した経費の支出を指すものだと理解をいたしております。

 もう少し、具体的に「緊要性というのはこういうものだ」という説明かと思ったら、とても緩いことに驚きます。これだと、その時々の政権の意向で「何でもやりたい放題」という事になります。財政法が作られた時の思いはきっとそうではなく、補正予算の膨張を防ぐ意図があったはずです。

 少し裏を明かすと、役所によっては「うちとしてやりたいんだけど、当初予算では付けてもらえない予算を補正に入れるようにしている。」と正直に語ったところもありました。時には財務省の側から、当初予算編成時に「これは補正で面倒を見る事にしましょう。」と持ち掛けてくることもあるそうです。当初予算を編成する時の緊張感が下がっている事をご理解いただけると思います。

 別にこれは現政権叩きとかいう事ではなく、日本の予算のあり方の根源に関わるところです。ある先輩政治家が言っていました、「最大の行政改革は『補正予算をやらない事』だ。」と。勿論、今年度第一次補正のように熊本地震への対応等で補正を組むことを否定しているわけではありません。そうではなく、年中恒例行事のように補正予算をやることをやめれば、当初予算編成にもっと緊張感が出て、真に必要なものを選別する力が働くという意味合いです。

 そこまで言うのは理想かもしれませんが、いずれにせよ、「緊要性」という言葉にもっと中身を詰める事は財政規律の観点からやっていかなくてはなりません。


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