山岡達丸

【山岡達丸】アメリカ大統領選に寄せて

山岡達丸です。
 アメリカ大統領選挙が終了しました。結果としては多くの専門家や報道機関が予想をしなかった「トランプ氏勝利」という結果でした。トランプ氏の実行力と本気度はどの程度かという議論は別にして、今回の選挙結果には私は世界の潮流の大きな変化を感じます。
 いまよりおよそ4か月半前、イギリスではEU残留か離脱かという国民投票が行われたことは記憶に新しいところです。そのときにも「結局は残留になるだろう」という世界の予想に反し離脱派が上回るという結果になりました。本当に離脱するかどうかは別にして、少なくともイギリスの投票者の過半数の人が離脱を「選んだ」のです。その背景に、移民の流入による国内の労働環境の悪化、それによる従来の中間層の生活レベルが著しく低下していく中で、かつて働いて幸せになれた良き時代に戻したいと考える人たちがEU離脱派に加わったことが大きかったとも言われています。そして今回のトランプ氏は強く主張した公約の一つとして「移民排除」を掲げていました。

 アメリカは1994年、NAFTAというアメリカとカナダ、メキシコの自由貿易協定を結びました。その結果、アメリカでは企業そのものや企業への投資家は豊かになっても、安い賃金で働く労働者がメキシコなどから大量に入り、あるいはアメリカの工場がメキシコに移転するなどし、労働市場の過当競争で労働者全体の賃金が下落、アメリカを支えてきた中間層と言われる人たちの生活が劣悪になっていったという分析があります。そんなことはないという主張もありますが、少なくとも私が現職国会議員時代のTPPを巡る米国議員へのヒアリングでは、アメリカの労働者の間で「NAFTA(自由貿易)で貧困になった」という認識があることを確認できました。
 移民政策とは、人道的な観点による場合も多くありますが、経済的な観点から言えばいわゆる「グローバリズム」という、世界で国境をなくしていけば世界はより豊かになるという思想が関わっています。しかしその結果、かつての企業はより賃金の安い労働者を雇い、またはその安い労働者と市場を求めて海外に工場を移転するなどし、従来の労働者たちは賃金の下落に苦しみ、また職を失っていきました。一方で一部の富裕層はさらに豊かになり政治力もさらに強め、税を逃れ、弱者に対する社会保障制度は最低限で良いとし、お金があれば良い食事、良い医療、良い教育に恵まれますが、お金がなければそれらは非常に劣悪なものになるという格差の拡大を招きました。トランプ氏の勝利、そしてEUの離脱派の勝利というのは、まさにこの「グローバリズム」のひずみによって生活苦に陥った人たちによる大きなうねりが生まれている、そしてそれが専門家(と言われる人たち)の予想をはるかに上回るほど広がりを見せていることが一つの形になって現れたと、もちろん移民問題だけが選挙の全てではありませんが、私はそうしたことがあるように思います。
 こうした潮流を敏感に感じながら、日本がこれからどのように世界の中で生きていくか、真剣に考えていかねばなりません。日本は特にこの20年、アメリカに習い「規制緩和」「民営化」などをキーワードにひたすらグローバリズムの理念の中で政策を進めてきました。その結果、一部の人は豊かになっても国全体の格差が拡大、多くの人の生活は苦しくなりました。TPPはグローバリズムの象徴的条約ですが、条約の主役であるアメリカが明確に自国保護主義に転換しグローバリズムを否定する代表を選んだ中で現与党はこの局面においても、なりふりかまわずTPPの採決を強行し国会承認を可決しようとしています。国家の行く末を官僚機構の判断に依存するところの大きい日本の政治体質は、一度決めた方針は後戻りできない、勇気を持って「立ち止まろう」と言えるリーダーがいないという状況になりがちです(こうしたことは戦前から変わっていないと言われます)。
 しかし、いまこの局面は本当に立ち止まりあり方を考え直す、そうしたことが求められていると強く確信します。

 ところで別の観点ですが、元報道記者の仕事に携わった身として今回のアメリカ大統領選挙を巡っての日本の報道にも思うところがあります。日本の報道は、これまであまりにもクリントン氏有利、トランプ氏不利の報道に傾注しすぎていたのではないかということです。
 確かにトランプ氏はさまざまな発言がクローズアップされましたが、しかしその一方でアメリカのトランプ氏の支持率は多少の上下はあっても発言内容の割にはずっと高い数値でした。それを日本のメディアは無学の人たちや差別主義者の人たちだけが支持しているかのような単純な分析の報道が多かったように思います。
 またクリントン氏がなぜ言われているほどには支持率が伸びないのか、そうしたことを十分に伝えてきたようには思いません。そうなって欲しいと言わんばかりの先入観と希望的観測の報道ではなく、目の前の事実にきちんと向き合い分析し状況を伝える、報道機関として当たり前のことが今回の報道では行われていたのかどうか、自らの記者時代のことも省みながらも考えるところでした。

 いずれにせよ、私自身もまた世界の潮流にしっかりと目を向け、北海道として、そして胆振・日高としてどのように生きていくべきかをしっかりと考え、地域の暮らしの向上と地域経済の活性化、そして東京など大都市集中型のいまの日本の政治を変えていくという強い決意のもと、皆様のご期待にお応えさせていただきたく日々の活動を続けて参ります。
 皆様に引き続きご支援をいただきますれば幸いです。


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