奥野総一郎

【奥野総一郎】言論封殺につながる自民党改憲草案

表現の自由を制限する改憲案を自民党が撤回せず

 先週に引続き、衆議院憲法審査会が開かれた。私は、表現の自由の問題をとりあげた。国民は言論の自由や報道の自由を保障されており、それを基に世論を形成し投票が行われる。表現の自由に制限を加える改憲提言は、民主主義の基盤を壊すものであり、日本国憲法の改正限界を超えている。

変えてはならない3大原則〜改正限界について〜

「改正」とは、現行の「日本国憲法」を前提として、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の原則を守りながら、これを一部改めるということである。ここまでは、衆議院の憲法審査会で、自民党も一致をしている。
 議論が噛み合わないのは、自民党が改憲のベースとする「日本国憲法改正草案」がこの改正限界を超えているかどうかである。私は、同草案について「一条一条全てが、3つの原則を逸脱していないといえるのか」と中谷元筆頭幹事に問うた。具体的に、21条2項(下記参照)を設け表現の自由に制限を加えることが、「基本的人権の尊重」という原則を破り「改正限界を超えているのではないか」と指摘をした。中谷筆頭は、「(草案の)すべての条文が改正限界を超えていない」、「(21条は)オウム真理教に破壊活動防止法が適用できなかった反省を踏まえた」、「公益及び公の秩序を害すること」という表現が「制限を厳しく限定している」と述べた。全く同意できない。

「第21条(表現の自由)

  • 1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
  • 2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」

「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」が具体的に何をさすのかははっきりしない。例えば、「政府の方針に反する活動」としている解説もネット上に存在する。となれば、政府の方針に反するような「報道」や「出版」「ネット上での意見表明」も行えなくなる恐れがある。

 米国、フランスの憲法には、基本的人権に制限を加えない、特に信教の自由、言論の自由や表現の自由のような「こころの自由」には一切制限を規定しないという常識がある。我が国も同様で、「ヘイトスピーチ」など人権が衝突する場合は、憲法13条に委ねることで調整されてきた。
今、あえてこうした改憲案を提言することに、言論封殺の意図を感じざるを得ない。即座に、撤回すべきだ。

改正は統治機構に関わる部分を議論すべき

 改正を議論すべきは、統治機構の部分だと思う。制定後70年の運用を経て、様々な課題が明らかになってきている。違憲立法審査権のあり方、地方分権の推進、参議院の位置づけ、緊急時における国会議員の任期延長、解散権の濫用などだが、こうした部分の改正を議論し、民意を反映しつつ三権分立が機能するよう国のかたちを再検討してはどうか。民進党は、参議院選挙に向けた政策集で、憲法裁判所について「政治、行政に恣意的な憲法解釈をさせないために、憲法裁判所の設置検討など違憲審査機能の拡充を図ります」と述べ、我党の枝野憲法調査会長は「解散権や違憲立法審査権などは改正を視野に入れ、我々としても議論、検討をしっかりやっていく」と述べている(25日)。変える必要がある部分、変えてはいけない部分をしっかり認識して、憲法審査会の議論を進めるべきだ。


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