江田憲司

【江田憲司】北方領土交渉。ロシアの腹芸にだまされた?・・・経済協力の食い逃げが心配

 今月15日~16日のプーチン露大統領の来日。そこでいよいよ「北方領土返還?」ということですが、大変厳しいですね。今私が一番心配しているのは、ロシア側に足元を見られて「経済協力」だけの「食い逃げ」をされることです。安倍総理の「歴史に名を残したい!」という功名心、その前のめり姿勢がロシア側に見透かされてますからね。

 安倍官邸は、この夏までは、しきりに「北方領土、特に歯舞、色丹の二島は返ってくる」「安倍・プーチン差しの会談直後の二人の高揚感を見ればわかる」「問題はあとの二島をどうするかだ」等々の情報を意図的に流してきました。それを受けてメディアも、年末のプーチンとの会談で歴史的成果を出して「すわ!解散か?」と煽ってきたじゃありませんか。

 でも、状況はすでに秋口から一変してましたね。ロシアとの事務的協議が「北方領土」に関してはまったく進んでいなかったからです。一方、「経済協力」については精力的に会談が重ねられてきた。今になって、安倍官邸や外務省は「米大統領がロシアに寛容なトランプに決まってその動機がなくなった」といった解説を流し、領土交渉が暗礁に乗り上げたことの言い訳をしていますが、違います。要は、「腹芸」にかけてははるかに上手のロシアに、安倍総理が見事にだまされてきたということでしょう。

 元々、ロシアと日本のメディア報道には天と地の違いがありました。ロシアでは、日ソ共同宣言(1956年)に明記された「平和条約締結後、歯舞・色丹二島を引き渡す」という約束ですら、①平和条約締結には領土問題は含まない、②二島「引渡し」はあくまで平和条約締結後で期限は切らない、③「引渡し」は物理的占有の移転で「領有権」は引き続きロシアにある、という考え方が主流なのです。

 その証拠に、先月の日ロ首脳会談直後に、ロシアはこれ見よがしに北方領土に地対艦ミサイルを新たに配備した。プーチンも会見で「二人だけで話したのは経済協力」と本来内密にすべき会談の中味を暴露する始末。明らかに「領土問題では譲歩しない」という強いシグナルでしょう。安倍首相が「(北方領土返還は)70年間解決できなかった問題で難しい」と語ったのは、こういう背景事情あるからです。今更、「何を言っているのか!」ということですね。

 実は、97年秋の橋本首相とエリチィン大統領による「クラスノヤルスク合意」は、「(北方四島の帰属を含む)平和条約を2000年までに結ぶ」という内容で、「戦後最も返還に近づいた日」と評価されました。首脳間の信頼関係でしかこの問題が解決しないのも事実ですが、安倍首相も過去の交渉経緯を今一度よく勉強して、ゆめゆめ国益に反するような合意をしないよう切に望みたいですね。


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