緒方林太郎

【緒方林太郎】IR法案

 2日の金曜日、IR法案(いわゆるカジノ法案)について衆議院内閣委で質疑に立ちました。どうも採決の際のゴタゴタばかりがTVに映るので、それしかやっていないのではないかと思われる方も居られるでしょう。私が質問した内容を少し説明したいと思います。なお、映像はココです。

 冒頭、委員長に苦情めいた事を言ったり、提案者と業界の関係について質問していますが、まあ、その部分は映像を見ていただければ分かります。特に難しい事は何も言っていません。2日の短い審議で採決に至った経緯についても細かく書きたくはありますが、あまり書くと色々な人間関係を損ねますので、一言「非常に残念なプロセスだった」とだけ書いておきます。あと、提案者と業界との関係については、今後、徐々に明らかになってくるでしょう。

 中身的に重視したのは、賭博罪の違法性阻却の話です。カジノは刑法第185条における賭博です。ただ、別法で認める事で、刑法第35条における正当行為として罰せられなくなります。これが違法性阻却です。この違法性阻却については、法務省が着目点として、以下のような8つの点を挙げています。少し長い答弁ですが、重要ですのでそのまま引用します。

【平成25年11月20日衆議院内閣委員会】

○平口大臣政務官 お答えをいたします。(略)
そこで、お尋ねのカジノにつきましては、一般論として申し上げますと、刑法に、賭博罪、また賭博場開張等図利罪、こういうものがございまして、これらが成立し得る、このように考えております。
(略)
他方、特別法を制定いたしまして、賭博罪が設けられた趣旨に反しない制度が構築され、その範囲内で実施される、こういうふうな場合には、カジノに係る行為について刑法上違法とされないこともあり得る、このように承知をいたしております。
そもそも、刑法が賭博を犯罪と規定した趣旨は、賭博行為が、勤労その他正当な原因によらず、偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものでございまして、一つは、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するということ、もう一つは、副次的犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあるということ、こういったようなことにあるわけでございます。
そのため、法務省といたしましては、これまでも、刑法を所管する立場から、目的の公益性、運営主体等の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止、こういったような点に着目し、賭博に関する立法について意見を申し述べてきたところでございます。
これからも、賭博に関する特別法が検討される場合には、このような観点から協力したい、このように考えております。
【引用終わり】

 私の質問は単純でして、今回の基本法でこの8項目は漏れなく対応されているかという事でした。あれこれと答弁がありましたが、結局、すべてに対応しているという力強い答弁はありませんでした。ここにきちんと対応しきれていなければ、違法性阻却がきちんとなされるのかが分からないという最重要ポイントです。

 その上で幾つかの項目について聞きました。まずは公益性です。今回のIR法案の何処に公益性があるのか、と質問しています。色々答えていますが、その中に「財政に貢献」という事がありました。しかし、財政に貢献するためには、IR事業者から納付金を徴収しなければなりません。法律に書いてあるのは「徴収できる」です。してもしなくてもいいのです。これでは財政に貢献できない可能性を残すではないか、と聞いたら、最後には「IR事業者が払う税金」みたいな事を言っていました。それで公益性があるのなら、すべての株式会社は公益事業をやっている事になります。答弁として成立していません。

 「提出者としては納付金は徴収するとの理解」と言っていましたが、それなら法律で義務規定で書くべきであり、そういう提出者の「祈り」を答弁で開陳したからOKという事にはなりません。逆にそれでいいのなら、基本法では「カジノを認めます」と一行書いて、その後に提出者の祈りを滔々と開陳する場を設けてしまえばOKという事にすらなりかねません。法律の基本がなっていないと思います。

 そして、ここは質問できませんでしたが、この法律では、仮に納付金を徴収したとしても、それが例えば依存症対策や反社会勢力の排除といった事業に使われる事や、公益性のある事業に振り向けられる事が一切担保されていないのです。それらに使われて、かつ財政に貢献するのであれば、納付金の水準は以下のようにならないとおかしいはずです。

(納付金)>(カジノ導入に伴う様々な対策)+(公益性のある事業への支出)

 こういう担保はこの法律の中には一切書かれていません。

 そして、上記の8要件に「収益の扱い」という項目がありますので、「仮に収益の中で公益性のある事業に全くお金が振り向けられない場合でも違法性は阻却され得るか。」と法務副大臣に聞きました。ビックリしたのは、ここで「総合的判断」という言葉で逃げを打った事です。さすがに収益の内、一部が公益性のある事業に振り向けられないのであれば違法性は阻却出来ないと思っていたのですが、ここで定型の逃げ答弁をしたのは問題だと思います。

 その後、射幸心の話を聞いていますが、これは風営法と賭博の関係についてかなり深く聞いています。非常に「言葉遊び」の要素が強い部分で分かりにくいので、別途稿を立てます。なお、言葉遊びをしているのは私ではありません。これまでの政府答弁です。

 なお、よく「IRの中でカジノが占める面積は3%」という言い方をします。しかし、世界のIRの中には「収益の8割がカジノ」という場所もあります。安倍政権によくありがちな「都合のいい数字」です。面積が狭いからいいという理屈を振り回すのは、国民を欺く行為であり止めるべきです。


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