緒方林太郎

【緒方林太郎】最近のフランス内政

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元外務省勤務、入省後すぐにフランスで研修を受けたという緒方林太郎衆院議員が、2017年にあるフランス大統領選に向けたフランス国内の政治情勢をわかりやすく解説しています。イギリスにおける国民投票でEU離脱賛成が上回ったBREXITやアメリカのトランプ大統領選出にあらわれた、「緩いメッセージ」を聞きたくないという国民感情はフランスにもあるようです。

出典 : http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-12241312067.html

 今年の欧州での大きな政治的イベントの一つ、フランス大統領選での候補者選考が進んでいます。先日、左派社会党の予備選第一回投票が行われ、ブノワ・アモン元教育相(Benoit Hamon)がトップ、マニュエル・ヴァルス前首相(Manuel Valls)が2位でした。3位のアルノー・モントブール元経済相(Arnaud Montebourg)は第二回投票ではアモン氏を推すと表明したので、アモン氏が左派の候補となってくる事が有力です。5年前、社会党の予備選挙でモントブール氏は3位となり、オランド候補支持に回り、オランド大統領の立役者となりました。

 逆に、ヴァルス氏は「確実な敗北(defaite assuree)のと勝てる可能性(victoire possible)との選択だ。」と巻き返しを図っています。大統領選挙に出るためにわざわざ首相を辞任までしたのに、この結果には焦りがあるでしょう。

 アモン氏とモントブール氏は社会党左派で、いずれもヴァルス内閣で閣僚でしたが緊縮政策に反対して更迭されています。主張を見ていると、経済への国家介入、緊縮政策反対等とても左派色がします。逆にヴァルス氏は社会党最右派です。首相になる前の発言を見ていると、とても社会党とは思えません。実際、首相になる時、右派側からは「我々と彼は何が違うのだ。」と疑問が巻き起こったくらいです。

 既に右派では、右派色の強いフランソワ・フィヨン元首相が候補となる事が決まっています。その際も中道寄りのアラン・ジュペ元首相に打ち勝って来ています。フィヨン氏は非常に自由主義かつ財政緊縮型の主張をしており、右派予備選で訴えた公務員削減案はどう見ても非現実的なくらい厳しいです。また、社会政策的には厳格な移民政策、愛国心教育等、典型的な右派的主張をしています。もう20年前くらいからずっとフィヨン氏は閣僚、首相等で国政の中心にいたわけですが、元からそんなにエッジの利いた主張をしていたような記憶がありません。次第にそうなっていったという事なのかなという気がします。

 こう見ていくと、今年の大統領選は事実上、極右(ル・ペン)、右派色の強い右派候補(フィヨン)、左派色の強い左派候補(アモン)で戦われるのではなかろうかと思います。そして、多分、選挙期間中はそれぞれの支持者向けに極めてエッジの利いた主張ばかりが飛び交うはずです。

 ここで感じるのが「中道的政治が流行らない事への懸念」です。政治のど真ん中にポッカリ穴が空いているような印象になります。例えば、右派の予備選で負けたジュペ氏は少し年齢が高いですが、右派から中道までを幅広く取り込める候補だったと思います。昔はテクノクラート臭さが嫌われていましたが、今は年季を重ね、重鎮感が出てきています。社会党予備選で2位だったヴァルス氏は中道色はあまり醸し出していませんが、右派にも食い込める可能性のある人物ではあります。

 ただ、今回の左派、右派での予備選挙の結果、更にはル・ペン現象を見ていると、そんな「緩いメッセージ」を聞きたくないというフランス国民の現れなのではないかと思います。ここはBREXITしかり、トランプ現象しかりです。グローバリゼーションにより、世界中で経済的に、心理的に余裕が無くなり、バナナの叩き売りのように非現実的なポスト・トゥルースが広まってしまう。穏健中道的なメッセージは流行らなくなっています。人はそれが仮に嘘だと分かっていても、一時の爽快感と溜飲下げのため、その主張を選挙で支持してしまうというふうに見えてしまいます。

 両大戦間にドイツで起こった現象と似通った事が世界中で起きているのでは、と懸念してしまいます。社会全体の閉そく感、自由の重さに耐えかねて、「一発芸」のようなもので一時の満足を得ようとするという事です。エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」でも読み返してみようと思います。

 なお、少しだけ大統領選挙の全体像について述べておくと、極右国民戦線のル・ペン党首が大統領で躍進しそうな可能性については、何か真新しい事のように報じられることが多いですけども、2002年フランス大統領選挙では既にル・ペン(今のマリーヌ・ル・ペンの父)が第一回投票で2位に着けて、第二回投票に進んだことがある事は想起しておく必要があります。シラク大統領(19.88%)、ル・ペン国民戦線党首(16.86%)、ジョスパン首相(16.18%)で僅差でル・ペン氏が第二回投票に進みました。当時、この映像を見て驚愕したのを覚えています。勿論、その後第二回投票でシラク大統領が圧倒的な票で再選されます。

 直近の全国的選挙である2015年12月の地方議会選挙で、国民戦線の全国得票率は27%を超えました。2つの地方では地方議会を取る寸前まで行きました。既に今回の大統領選挙で左派は候補が(いつも通り)分裂気味ですし、右派についても中道系候補が出てくれば票が割れるでしょう。下手をすると、第一回投票ではル・ペンがトップで来る可能性すらあり得ると見ています。

 ちょっと纏まりがないですけども、最近のフランス内政を見て居ての感想です。


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