辻元清美

【辻元清美】「なぜ私の声明を入れなかったのか?」「だって署名も四島名もないから」――そして「ロシア側が異なる呼称を用いても、我が国の立場を害するものではない」と驚きの答弁

thedemocraticparty

2月1日の予算委員会で、日本とロシアの交渉について安倍総理を追及した辻元清美衆院議員。委員会終了後も安倍総理と話していたことがテレビに映っていたことが関係者の間で話題になり、何を話していたのかを明かしています。

出典 : http://www.kiyomi.gr.jp/blog/10491/

今日の予算委員会の質疑で、NHK中継が終わった後に私と安倍総理が立ち話をしている姿が映ったらしい。そのため「何を話していたのか?」と多くのメディアに聞かれることになった。

私は安倍総理と言葉を交わしたのは以下の件だ。

「総理が自分の2013年の声明が私の示した資料に入ってない、意図的ではないか、とおっしゃった。でもあの文書は署名もなく、北方4島の名前も入っていないので、資料には入れなかったんです。総理、認識が間違っているのではないですか」と伝えたのだ。そして、「なぜロシアにミサイル配備されて黙っているのか」とあらためて話した。

●安倍総理、間違っていませんか?

「辻元委員の資料に重大なものが抜けている。2013年の私とプーチン大統領の共同声明が抜けている。意図的なのか?」岸田外務大臣に答弁を求めたはずの私は、いつものように割り込んできた安倍総理の「逆質問」に驚いた。私が今回、領土問題に関する質疑にあたって「日露間の主な合意文書」と示したのは以下の6つの文書だ。

1)日ソ共同宣言(1956年1月)
2)日ソ共同声明(1991年4月)
3)東京宣言(1993年10月)
4)モスクワ宣言(1998年11月)
5)イルクーツク声明(2001年3月)
そして今回の「プレス向け声明」である。

予算委員会資料01

予算委員会資料02

予算委員会資料03

私の質問の主旨は、安倍総理が「70年間一歩も領土問題は進んでこなかった」とあまりに誇らしげにいうので、先輩方の血の出るような努力でこうした合意を積み重ねてきたことを知ってほしたかったのだ。
安倍総理の質問に私はお答えした。安倍総理がおっしゃった「日露パートナーシップの発展に関する日本国総理大臣とロシア連邦大統領の共同声明」には、
・合意した当人の署名がない。
・4島の名前はおろか、そもそも北方領土に関する記載がない。
から比較対象から外した、というシンプルな理由である。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000004183.pdf

上記(1)~(5)の声明にはもちろん署名がある。また、(2)の日ソ共同宣言で四島の名前が記されて以降は、四島名が明記されている。確認できる範囲で確認したが、ソ連・ロシア側の資料でも同様である。

※参考:『我らの北方領土』(2015年度版)

つまり安倍総理になってから、四島の名前は消えている? ように思えるのだ。全部の文書を見たわけではないけれど。これが私の疑問の出発点だった。
なお、実は(1)~(5)は、読売新聞の記事(2016年12月17日)も「主な合意文書」としてとりあげている。もちろん、日露・日ソ間で結ばれた領土問題に関する合意文書はたくさんある。推測ではあるが、2013年の安倍総理の共同声明は、上記のような理由もあって、読売新聞もとりあげづらかったのではないか。

●「プレス向け声明」が共同声明にならなかった理由――存在する2つの文書

この日の質疑で指摘したように、昨年12月の「プレス向け声明」は、日本側とロシア側で「二つの文書」が存在する。
日本側には四島名が明記され、クレムリンが公開しているロシア側の文書では「南クリル列島」となっている。これは岸田外相も認めた通りだ。

「プレス向け声明」(ロシア大統領府HPより)
http://www.kremlin.ru/supplement/5151

これが、「共同声明」を作れず、署名もできなかった理由ではないか!呼称が一致しないため共同声明にならなかったと岸田外相も認めた。しかし驚いたのは次だ。ロシア側が異なる呼称を用いても、我が国の立場を害するものではない(からいいのだ)と明言したのだ。

これまで四島の名前を書き込むために、先人たちがどれだけ外交努力を積み重ねてきたと思っているのか。外交はバトンリレーだ。四島の名前という核心部分は両者一致したものを書き込んで、次の政権に受けついでいかなければいけないのだ。

安倍総理に近いといわれるジャーナリストが、安倍総理に取材して書いたと思われる「暗闘」という本にも、こういう記述がある。
「『南クリル』という表現では、四島すべてを含むかどうかはっきしりない危険性がある」「ここで安倍が乗り越えれなければならない最初の課題は、北方領土での共同経済活動の(133P)対象を『四島』と明記することだった(略)第一目標は、すべての島名を列挙することで完璧にクリアされた。」(139P)

しかし安倍総理は、「私はバトンを渡すつもりはない」と答えた。私の代で解決す
る、と。
私は、経済交流をすれば解決するというほど簡単なものではないと考える。

この核心部分を解決しないまま(というか、過去の外交試算も受け継がないままに)、3000億円という外交カードを切ってしまったことが問題なのだ。結局私が指摘したように、北方領土問題は、日米安保条約とリンクしている。そこをさけていくら経済協力をしても、解決は困難。今回、核心の安保問題は見通しがないなか、大型の経済協力のカードを切ってしまった。今後、こちらが切るカードがなくなってしまったという懸念を示した。

●稲田防衛大臣、マティス防衛大臣とは一人で会うんですよ

なお、稲田防衛大臣に「北方領土が返還されたら、日米安保条約が適用されるのか?」と質問したが、「所管ではない」ので岸田外務大臣が答えます、との答弁。私は、今度マティス米防衛大臣と会談するときは一人なのだから、岸田大臣には助けてもらえないですよ、と釘をさした。

安倍総理は「信頼関係」を繰り返すが、15回も会っていながら、どうして直前でミサイルを配備されるのか。私はあらためて、事実関係を示した。
1)第二次安倍政権で12回、全部で15回も会談した。
2)土壇場で地対艦ミサイルを国後島と択捉島に配備された。
3)ロシア側には四島の名前を明記していない別の声明が存在する。
4)四島の名前を明記した両首脳が署名した文書の合意は結べなかった。
5)一方、経済関係などの覚書を12本結んだが、半分くらいは非公開。

●トランプの措置はテロを誘発するのではないか

そして最後に、私はトランプ大統領の7カ国の国民の入国を禁止した大統領令について、総理に提案した。各国の首脳が発言しているのは、自国にテロが及ぶのを恐れているのだ。イラン外務省は、「過激派とその支持者らに対する素晴らしい贈り物になった」と述べている。
トランプの措置はテロを誘発する可能性がある、と。そこに意見をいわないということは、同調しているとみられるのだ。2月10日トランプ大統領にあったとき、トランプ大統領のテロとの闘いを支持する、とは言わない方がいい、と釘をさした。
各国首脳は国民の命をまもるために、トランプ大統領の措置に批判をしている。総理も日本にテロを誘発させないためにもコメントを出すべきだ、と。
オリンピックは多様性だと総理自身もいっている。日本は多様性と共生を大事にしている、寛容と和解大事にしている、トランプさんもどうですか、と一言おっしゃって
はどうか・・・と。
東京オリンピックの基本コンセプトは、「多様性と調和」なのだから。

●安倍総理の後ろから官僚が・・・?

最後の最後、安倍総理は答弁のなかで無理やりこう付け加えた。
「辻元さんはロシアのビザで(北方四島に)いったかもしれませんが」私は、官僚が後ろからこそこそ総理に伝えているのだと思い、実は「きたきた」と思っていたのだ。まさかそんな細かいことを一国の総理が知っていて、答弁準備をしているとも思えないので。

私は予算委員会の冒頭で、国会議員になる前に色丹島を訪問するなど、北方四島をめぐる民間交流を行ってきたことなどを「あえて」話した。元島民の方々、サハリンで引き上げ船に乗れなかったために置き去りにされた日本人、炭鉱労働者として連れてこられた朝鮮人、長い間無国籍のまま放置された人たちもいる。みな戦争で翻弄された人たちだ。

当時は北方四島どころかサハリン渡航も難しかった。相手の主権を認めるのではないか、という批判があったが、当時、細々と民間交流を続けてきた人たちの意義は大きかったと思う。私は、国と国の壁があるのなら、民間の交流でなんとか風穴をあけて、みなさんの祖国への墓参などを進めたい、と民間の立場で支援し続けてきたのだ。だから私は、今回安倍総理が元島民の方々の墓参が改善された点は評価した。

島民のみなさんの思いについては、共有できると思っている。しかし一国の総理が官僚の小ネタをこんな大事な議論で披露して、私へのバッシングを拡散させるために使うのだとしたら、ため息しか出ない。他意はなかったと思いたい。

いま、日本は大事な局面にある。引き続きがんばらなくては。


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