緒方林太郎

【緒方林太郎】決算委員会第一分科会質問(シリア情勢、北朝鮮情勢、経済協力等)

thedemocraticparty

民進党の緒方林太郎衆院議員が、決算委員会分科会で質疑した、シリア情勢、北朝鮮情勢、経済協力等について、米国がどのようなスタンスで各国と接しているのか織り交ぜながら解説しています。

出典 : http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-12264399596.html

【要旨】

 本日、決算委員会分科会で質疑。シリア情勢についての基本的な日本の立ち位置、対北朝鮮での抑止の効果検証、経済協力、外務省の研修体制について足早に質問。特にシリア情勢については、政権の本音、苦悩が見え隠れする内容だった。

【本文】

 今日、決算委員会第一分科会で質疑に立ちました。内容はシリア情勢、北朝鮮情勢、経済協力等について官房長官、外務副大臣に質問しました。シリア、北朝鮮については、基本的に事実確認的な内容に徹していますが、非常に示唆的な答弁があったと思います。それぞれの映像はリンクを見ていただければと思います。

 

● シリア情勢

 まず、冒頭、シリアにおいて「化学兵器は使用されたのか」、「使用したのはアサド政権か」の2点について聞きました。答弁は、前者については「はい」でしたが、後者については現時点では確定的な答弁がありませんでした。

 また、化学兵器の使用はレッドラインを超えたのか、と質問しました。この「レッドライン」という表現は、2013年時点でオバマ大統領が使った表現です。通常、米国大統領が「レッドライン」という言葉を使えば、「やったら武力行使だ。」という事を含意します。しかし、オバマ大統領は化学兵器使用に対してそのオプションを選びませんでした。それがオバマ大統領の権威の低下を招いたわけでして、今回、トランプ大統領がシリアに攻撃をしたのは、その時との対比を強く意識したのではないかなと思っています。なお、答弁は「米国が判断する事」というちょっと「?」な答弁でした。

 そして、イラク攻撃の時との対比で誰もが気になる「証拠の提示はあったのか?」という問、これは聞かざるを得ません。答弁は「米国とのやり取りの詳細については控える。」というものでした。まあ、これ以上の答弁は用意されていなさそうでしたので、これはあまり追いませんでした。

 更に本件に伴う安倍総理の声明について質問しています。これはメディア各位が間違って報道しているものです。安倍総理が言っているのは、以下のようなものです。

① 化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意を支持

② 今回の米国の行動はこれ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解

③ 国際秩序の維持と同盟国と世界の平和と安全に対するトランプ大統領の強いコミットメントを高く評価

 まず、日本が支持したのは①「決意」です。「行動」ではありません。そして、高く評価したのは一般論としての③「平和と安全に対するコミットメント」です。逆に「米国の行動」については、単に「これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解」しているに過ぎません。

 メディアは「米国の行動を理解」と報じているところも多かったですが、これは間違っています。「理解」という言葉には幾つかの意味があり、「物事のすじみちをさとること。わけを知ること。物事がわかること。」というものと、もう少し踏み込んだ「人の気持や立場がよくわかること、相手の意をくみ取ること。」といったものがあります。「米国の行動を理解」と書くと後者の意味合いになりますが、今回の安倍総理声明の「理解」は後者ではありません。単に「○○と承知している」程度の意味であり、非常に弱い表現です。

 「なんだ、言葉遊びか。」と思われた方もいるでしょう。しかし、この表現の違いは外交上とても重いのです。以前書いたブログでも紹介したのですが、1999年コソボ空爆の際、高村外相とオルブライト国務長官との間で本件で緊張感あるやり取りをしています。高村外相は爾後、ある場所で「NATOによるコソボ介入の時に私は外務大臣であったのですが、それに対して私は当時『理解する』と言いました。『支持する』とは言わなかった。オルブライト国務長官から電話がかかってきて、『支持してくれてありがとう』と言いますので、『理解します』と答えたが、これを3回くらい繰り返した。」と語っています。気まずい雰囲気だったことは想像に難くありません。

 しかし、安倍総理の声明は上記①や③を述べる事で、出来るだけメディアに「支持」、「評価」という表現が踊るように誘導しています。そこまでやるのなら、単刀直入に「行動を支持」と言うという選択肢はないのかなと思い、「米国の行動は支持しないのか。」という質問をしました。裏の裏まで読んでの質問でしたので官房長官は苦笑いしていましたが、最終的な答弁は「攻撃に対する国際法上の評価が定まっていない。」という答弁でした。

 少し技術的ですが、今回の爆撃は2013年国連安保理決議2118パラ21における「国連憲章第七章の下での措置」とは考えているんじゃないかな、とも思いまして、認識を聞きましたが、答弁は「国際法上の評価は定まっていない」のままでした。概ね政府の考え方は明らかになりました。

【国連安保理決議2118パラ21】

21.  Decides, in the event of non-compliance with this resolution, including unauthorized transfer of chemical weapons, or any use of chemical weapons by anyone in the Syrian Arab Republic, to impose measures under Chapter VII of the United Nations Charter

 

● 北朝鮮情勢
 3月16日、ティラーソン国務長官は岸田外相との会談での記者会見で「北朝鮮に対して非核化を求めた過去20年間の政策は失敗だった」と述べています。まず、「こういう認識を共有しているか。」と聞いています。あまりはっきりとした答弁はありませんでしたが、言外に「上手くいっていない」というニュアンスが滲んできました。

 ここで重要な事は「何が上手く行かなかったのか」という点です。抑止が効かないというのは、大きく分けて2つの可能性があります。① 政策の中身そのものが問題だったのか、② 政策は間違っていなかったが、抑止効果を与えるようなかたちで北朝鮮側に伝わっていなかったということなのかです。どんなに「核兵器を進めたら武力攻撃の対象となる」と言っても、相手がそれを信用しなければたかを括られてしまいます。抑止の理論というのは、メッセージがどういう形で伝わっているのかという部分がポイントです。その検証をすべきとの問題意識から、「何が上手く行かなかったのか」と聞きました。官房長官は意外にも正直でして「どちらにも問題があった。」という事を示唆していました。

 ここは「ゲームの理論」的な視点でして、与野党問わず、何が上手く行っていないのかを、事実関係をよく収集してみて、そして理論的に解明していくのが大事だと思います。

 

● 経済協力(JICA専門家のあり方)

 ここからは質問の内容をガラっと変えまして、経済協力について聞いています。私が昔から「これはねぇ…」と思っている事がありまして、それは途上国に派遣されている各省庁からのJICA専門家の存在です。言語能力が怪しい、大して役に立っていない、いつも派遣元の省庁ばかり見ている、本当に看過しがたいケースを昔、何度も見ました。何故、そのような専門家を受けているかというと、受け入れ国側でも「居ても居なくてもいいんだけど、受け入れると機材供与が来る。機材が欲しいから受け入れている。」というケースだってあるわけです。

 つまり、事実上、各省庁の人事サイクルの一環として派遣されているだけという事です。平成27年度に派遣されたJICA専門家は980人、その内、省庁出身者は230人とかなり多いのです。

 外務副大臣は「ご指摘は当たらない」と言っていましたが、正直「誰だ、そんなブリーフをしたのは!」とムッとしました。ただ、問題意識はきちんと伝えたので厳しくやってほしいと思います。答弁では言えないものの外務省も分かっていると思います。

 

● 経済協力(水産無償)

 かつて、経済協力の無償資金協力の中で「水産無償」という特別枠がありました。私はセネガル在勤時、何度も見ましたが、本当に「良い思い出」が一つもありません。水産庁の既得権というような感じがプンプンしました。既得権化すると、予算消化の発想が出てきて無駄な事業を作ってしまうのです。

 外務省が行っている「水産無償」については、2015年度から、そういう特別枠的な「サブ・スキーム」を廃止するという事になっています。そういう方向でいいと思いますが、「如何なる意味においても区分経理、水産無償単独での予算確保はやっていないとの理解でいいか。」と質問しました。「やっていない」との事ですが、予算配分状況を見た上で廃止後の変化があるのかどうかをもう少しよく見ていきたいと思います。

 また、外務省分とは別に、水産庁が独自に行っている水産無償は「無駄遣い」で会計検査院からの指摘が2度も入っています(2008年、2014年)。需要のないところに無理をして施設を作っているとの厳しい指摘です。しかも、事業の大半が公益財団海外漁業協力財団に配分されています。大体、水産庁の水産無償の8割くらいは同財団が実施する事になっています。そして、同財団の事業の大口は国費によるものです。

 更には、理事長は10数年前に退官した農水OB。典型的な役所の資金で動いている天下り団体にしか見えません。細田農林水産大臣政務官は「特に問題はないと思う。」と答弁していましたが、本件はまだまだ追っていきます。

 

● 外務省の研修体制

 最近、外務省において「新入省員で外交史や国際法の素養が不足している人がいるので研修を強化する。」との報道を見ました。良い事だと思います。

 その一方、現在の省員についても語学力の問題がある人がかなりいます。例えば、私はフランス語研修ですが、外務省フランス語研修組の中には「こりゃ、ダメだ」と思いたくなるくらいの能力の人がかなりいます。2年国費でフランスに留学させてもらって、その後30年近く奉職した大使のスピーチを聞いて愕然とすることは稀ではありません。2年フランスで研修させたことそのものが税金の無駄だと思えるくらいのレベルです。答弁は「ちょっと問題意識に欠けるのではないか?」というものでしたが、平場で厳しく指摘させていただきましたので改善を図っていく事を期待したいと思います。

 以上、長々と書きましたが、前半はそれなりに面白い答弁だったと思います。


記事一覧