篠原孝

【篠原孝】議会の厳しいチェックを受けるトランプ政権-三権分立の効く民主国家アメリカ-17.05.12

thedemocraticparty

民進党の篠原孝衆院議員が、日米議員交流プログラムに参加した模様をブログで報告。
トランプ政権誕生から100日が経ち、公約の実行に努めるトランプ大統領に対して、議会や裁判所にによるチェックが機能していることや米国の議員会館を訪問した際の日本との違いや共通点について触れています。

出典 : http://www.shinohara21.com/blog/archives/2017/05/170512.html

 私は、昨年に引き続いて日米議員交流プログラムに参加し、トランプ政権発足100日目の4月29日にアメリカ入りし、1週間滞在、うち2日間は北朝鮮問題、日米経済問題、トランプ政権の行方等についてドップリと英語で議論し、その前後に農業関係者と意見交換し、更に旧知の国会議員との旧交を温めて帰国した。

 

<予算とオバマケア代替法案でつまずくトランプ政権>

 アメリカ側からは、国会開会中の12月なり1月に来て国際会議で我々が一緒に議論することが多い。ところが今回アメリカ側は国会がてんやわんやで、出席しても20分か30分で次々に議席に戻らないとならず、身を入れて意見交換ができなかった。トランプ政権が予算案が通らず苦戦していたからである。例えば民主党は例のメキシコ国境に壁を造る予算など絶対に認めないとしていた。トランプ政権予算の本格化は18年の10月からであり、争点になる政策予算は先送りされている。ところが、民主党との間は完全に対立関係になっており、議会がなかなか思い通りにさせてくれないのだ。
 4月中に10月までの5ヶ月間の予算の修正が通るはずだったものが通らず、5月1日からの週に持ち越された。やっとそちらの方は折り合いがついて通ったものの、問題はオバマ医療保険制度改革(オバマケア)を廃止して新制度に置き換える法案である。

 

<三権分立が働く民主主義国家アメリカ>

 日本では全く判で押したようにトランプの100日間はなっていない、支離滅裂だといった批判ばかりが多い。尚且つ投票した人達、支持者からも見放されたといった論調が目立つが、アメリカの新聞を読んでいる限りではそこまで一辺倒ではない。国民の半数がクリントン候補に投票したわけだし、大手マスメディアは大統領候補の時からトランプ攻撃ばかりだったり、就任後もトランプほどマスコミから嫌われている大統領はいない。
 トランプに投票した人達の支持率は、100日間終わって96%だという。公約したものがろくすっぽ実現されていないというのが日本の論調だが、これもまた違っていて、ほとんどの公約を必死になってやろうとしている。典型的な例がイスラム国からの入国禁止だが、裁判所からあえなく違憲判決され、控訴もせずそのままになっている。それだけのことで、批判の声が大きくなったわけではない。すぐ実現はできないが、素直に公約実現に動くトランプの姿勢は、支持者からは評価されている。
 アメリカはそういう意味では非常に抑制の効く三権分立の国だということがよくわかる。トランプの暴走を裁判所が抑えたばかりでなく、今度は議会がトランプの横暴を許さず、きちんとチェックしていく。行政が強大な権限を持ち、司法も覆せず、立法も口を挟めない安倍一強体制の日本とは大違いである。

 

<行方がわからない代替法案>

 特に民主党はオバマケアを廃止して新しい制度にすることには絶対反対であった。下院は435議席、従って218議席を獲れば承認される。ところがそれも政府関与を減らすべきという保守強行派が反対し、承認される見込みがないので3月に法案が取り下げられ、約1ヶ月以上放っておかれた。オバマケアの廃止は選挙公約の目玉の1つであり、トランプ大統領もかなり固執して、我々が滞在している時に下院にかかることになった。既往症のある人のために80億ドルの政府援助を盛り込み、穏健派が納得した。その結果217対213でやっとこさ下院が通った。
 しかし、これからの上院は共和党52対民主党48で4票差しかないうえに、上院の共和党の穏健派は新しい制度に疑問を持つ者が多く、どうなっていくかわからない。

 

<公約をまじめに実行、一方で新しいこともやり出すという矛盾>

 党議拘束のないが故のダイナミックな国会の動きである。だからトランプは色々と苦労しており、予算を通さないのなら政府機関を閉鎖してもいいといった脅しまでかけ、議会に早く予算を承認するよう働きかけた。しかしオバマケアが廃止され、新たな法案が下院を通ったということで、大きな公約が実現したことになる。
 もう1つ、NAFTAについては脱退と言っていたし、100日間の4月29日にはその旨宣言する予定だったが、再交渉ということになった。TPPと異なり大きな現状変更となることを考慮し、少し現実路線に舵を切ったようである。
 トランプは公約したことを必死に実現しようとしている。そのうえ公約にないこともやりだした。一番大きなことは、シリアに対し異例の59発のミサイル発射、それを習近平国家主席がいる時にわざとぶつけたことである。世界の警察官を辞めてアメリカファーストでいくと言っておきながら、圧倒的武力で北朝鮮に圧力をかけるというのは、えらい変身である。挙句の果てには金正恩と会うとまで言い出しひんしゅくをかっている。

 

<サンダース上院議員に会えず残念>

 旧知の議員にアポイントをとっていたが、他にアメリカ大使館を通じてエリザベス・ウォーレン上院議員(民主党)と大統領候補になったバーニー・サンダース上院議員の2人のアポイントを強く要請していた。一向に連絡がなく、別のルートでやっとサンダース議員に会えることになった。ところが、サンダース議員も上院で、日本でいうと禁足のようなものが出てしまい、議席を離れられなくなってしまったため会えずじまいだった。ただ私はしつこく事務所まで行き、秘書に会い4本しか残っていない “STOP TPP”ネクタイのうちの1本預けてきた。来日の折には、民進党や「TPPを慎重に考える会」で話をしてほしいということを付け加えた。
 その折、あまりにも広い部屋なのでいったい何人秘書がいるのかと聞いて、その答えにびっくら仰天した。ワシントンDCに30人、地元のバーモント州に20人とのことだった。日本は当選15回の議員も1期生も同じ報酬である。しかし、地下の売店で購入した、アメリカ版国会便覧には、当選回数順の総括索引もあるくらいだから、「力」により扱いが違うようだ。その一つとして、アメリカの上院議員の場合は、州の人口の大きさによってお金が違ってくるという。バーモント州などはカナダの国境近くの小さな州で、人口比で割り振られる下院議員が1人、上院議員が2人という有り様である。これがカルフォルニア州(下院議員52名)選出の上院議員であったら、一体どれだけの秘書を雇えるのだろうか、見当がつかない。理由は簡単であって、前述のとおり、三権分立が徹底しており、法案の提出権は議員にしか認められておらず、○○省提出法案は存在しないからだ。従って、有力な議員の事務所が法案作りをしないとならないからである。その結果提出した議員の名前のついた法案が並ぶことになる。

 

<アメリカの国会議員は100万人に1.6人と世界で最も少ない国の一つ>

 アメリカは人口が日本の約3倍の3億1600万人なのに、上院100人、下院435人の計535人。人口100万人当たりの議員数が1.69人とズバ抜けて少ない。日本は衆議院475人、参議院252人の計727人で、100万人当たり5.69人。ドイツ(8.68人)、フランス(14.01人)、イタリア(15.59人)、イギリス(22.48人)と欧州諸国の方がずっと多く、日本がアメリカに次いで少ない。それをいつも日本の国会議員の数が多いというような論調が多いが、あくまでアメリカと比べてのことでしかない。つまり、アメリカの国会議員は、世界で1番多くの人たちを代弁しているのであり、それが故の優遇である。

 

<何処も同じ国会議員会館>

 陳情客が溢れる下院の議員会館が3つ、上院の議員会館も2つ。同じぐらいの大きさなので、上院議員にはなかなか広い会館である。
 しかし、セキュリティチェックが厳しいアメリカなのに、より多くの国民が国会議員とスムーズに接しられるようにという配慮から、入口でちょっと金属探知機をかけられるだけである。だから、日本のようにどの国会議員に会うといったペーパーも不要であり、私もサンダース上院議員の部屋にさっさと行けることになる。鍵をかけて来客をシャットアウトするどこかの国のどこかの役所とは全く異なるのだ。
 しかし、陳情客が多く行きかい、地下に土産物屋があり・・・、と日本と同じ雰囲気があり、親しみを感じた次第である。
 政策編については、この後何回か連載する。


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