緒方林太郎

【緒方林太郎】地方分権の難しさ(県費負担教員給与の移譲)

thedemocraticparty

民進党の緒方林太郎衆院議員が、小中学校の教員の給与権限が県から政令指定都市へ移譲されたことを評価しつつ、地域手当は政令指定都市に移行することで県よりも下がってしまう政令指定都市があることを指摘し、地方分権の難しさを語っています。

出典 : http://ameblo.jp/rintaro-o/entry-12299999577.html

【要約】

  • 小中学校の先生の給与が、県から政令指定都市に移譲された。これ自体は良い事。
  • 国も努力をして、財源移譲は(少し不満はあるものの)なされた。
  • ただ、最後、「地域手当」の件で一部政令指定都市(北九州、堺)は苦しい状況にある事も分かった。それぞれの自治体では知恵を出しながら特色ある制度を構築すべく努力している。

 

【本文】

 今年度から、小中学校教員の給与権限が県から政令指定都市に移譲されました。これは平成26年に成立した「第4次地方分権一括法」の中で成立したものです。小中学校の先生については任命権限は市町村にあるのに、給与は県から支払われるという状況について、政令指定都市についてはその権限を政令指定都市に移譲したという事です。

 素直にこの移譲については評価したいと思います(その旨は国会審議で何度も石破大臣に述べました。)。他方、権限が移譲されるという事は、給与を支払うための財源がきちんと移譲されなくてはなりません。本件については、地方住民税(所得割)の2%を県から政令指定都市に移譲しました。これについても高く評価したいと思います。地方分権をするけど、リアルに税財源が移譲されるというのは稀で、いつも地方交付税の枠内でのケーキの切り分けでお茶を濁す事が多かったからです。

 実はリッチな政令指定都市になると、この地方住民税の移譲だけで給与の支払い分くらいは賄える所があります。具体的には神奈川県川崎市です。「やっぱり、リッチな街は違うぜ。」と思ったものです。しかし、我が北九州市を始めとする多くの政令指定都市ではこれでは賄えません。一定の条件を置いて試算すると、北九州市で140億円、福岡市で127億円足らないという事でした。なので、足らざる部分は地方交付税で手当てするという制度が組まれています。

 この地方交付税移譲について、私は何度か国会で質問しました。その結果、たしかに100%移譲してもらえることになりました(本当は教員の年齢構成、システム変更費用、退職金等色々な事情はありますが、基本的には100%地方交付税で面倒を見てもらえるという事でOKです。)。

 しかし、これは標準的な需要に対応するものであって、例えば独自の教員加配分等には対応していないような気がしたので、余り(留保財源)が出る形で移譲してくれないかと何度か国会質疑で話しましたが、これは撥ねられてしまいました。理由としては「厳格に標準的な需要のみで教員配置をやっている政令指定都市には渡し過ぎになってしまう。」という事でした。分からないわけではないですが、ちょっと残念です。

 で、ここで「良かった、良かった」と思っていたら、最後に重い物が残っていました。「地域手当」です。実は我が北九州市はこれで苦しんでいます。地域手当についても、各政令指定都市で適用される分はきちんと移譲されてきます。北九州市ですと3%です。しかし、これまで適用されてきた福岡県の地域手当は4.25%でした。この1.25%(4.25-3)の地域手当分は北九州市にはやってこない事が明らかになりました。聞く所では4-5億円に相当するそうです。

 実は県よりも地域手当が低い政令指定都市は、全国的に見て北九州市と堺市だけです。例えば、神奈川県ですと、横浜市、川崎市が16%、相模原市が12%で、神奈川県が11.5%です。お隣の福岡市も県よりは地域手当が高いです。なので、極めて限られた自治体のみの事情なので、そこまで大きなムーブメントを作る事が難しい問題でした。東京で誰と話しても、関心を持ってもらえませんでした。そもそも、政令指定都市固有の話は、関心を持つ議員の数が限られる上に、政令指定都市選出議員と話してもよく知らない方が多かったです(私が質問した時の総務大臣政務官は政令指定都市選出でしたが、同政務官ですら何の関心も持っていませんでした。)。

 となると、地方分権を進めた結果として、論理的には、小中学校の先生の地域手当が(地域手当の差分だけ)増える政令指定都市が大多数である一方で、減ってしまう政令指定都市が2つ(北九州市と堺市)という事になります。

 各自治体ともかなり苦労しておられまして、堺市は(大阪府の地域手当より低い)地域手当を適用しつつ、教員の本給を少し上げたそうです。逆に横浜市などは、当初、「地域手当は神奈川県並みで据え置けないか(16-11.5で4.5%分の節約)」と当初考えたそうです。結果、地域手当は横浜市の他の公務員と同様の水準に上げつつ、本給を下げたと聞いています。

 我が北九州市は地域手当は下がるのですが、その分、経過措置を講じたり、扶養手当増額、休暇の取得等の条件改善等を講じながら、最大限の努力をして、全体としての福利厚生を維持すべき努力をしたと伺っています。地域手当だけで議論するべきでなく、全体と見た判断が必要なのだという事は後日、よく学びました。

 ただ、この地方分権を進めたら、地域手当が増える自治体、地域手当が減る自治体が出るという事実を見て、地方分権というのはなかなか難しい、とつくづく感じました。実務に降りていけばいくほど、地方自治は人の顔が見えてきて難しいと、東京で跋扈するチープな地方分権礼賛論との差を見て取りました。

 なお、最後に余談を一つ。この移譲に関し、私が国会質疑をした中で判明した事がありました。これまで福岡県に配分されていた教員枠を、県の判断で北九州市相当分から32名、福岡市相当分から47名召し上げて、それを他地域に加配していたことが明らかになりました。これまではすべて県が一括で差配していたので、県の教育政策の中で特定の地域に加配する事が悪いとは全く思いません。むしろ、良い事だと思います。ただ、政令市側に何の説明もなく、これまでそういう事をやっていた点については不信感の原因になります。とても違和感を持ちました。

 技術的な内容で、かつ地元色の強い内容ですが、地方分権の本質的な部分をえぐる内容だと思います。本件をしつこく追った政令指定都市選出議員は私だけです。今後もこういうテーマはしっかり探して取り上げていきたいところです。


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